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犬・猫のがん(腫瘍)を見逃さないために|獣医師が解説する早期発見のサインと診断の流れ

前回の記事では、当院が大切にしているがん治療の基本方針(外科手術・化学療法・支持療法)についてご紹介しました。

▶︎前回記事(犬や猫のがん治療について|当院が大切にする治療の選択肢)はこちら

 

しかし、治療の選択肢を考える前にもっと大切なのは、「いかに早くがんに気づけるか」ということです。
実際に、犬や猫に腫瘍が発生することは決して珍しくなく、特にシニア期を迎えるとリスクは高まります。

 

言葉を話せない動物の変化に気づけるのは、日々そばで過ごしている飼い主様だからこそ。小さなサインを見逃さずに受診へつなげることが、健康な時間を守る大切な第一歩になります。

 

そこで今回は、犬や猫に現れるがんのサインや、病院でどのように診断を進めていくのかをお伝えしていきます。

 

 

■目次
1.これって病気のサイン?チェックしたい主な症状
2.飼い主様にできる毎日のチェックリスト
3.動物病院での診断の流れ
4.診断を受けてから、これからを考える
5.まとめ

 

これって病気のサイン?チェックしたい主な症状

がんの症状はとても多様で、最初は「年齢のせいかな」と見過ごされてしまうことも少なくありません。けれども、次のような変化が見られたら注意が必要です。

 

<見た目の変化>

・体にしこりや腫れができた
・短期間で急に痩せてきた、あるいはお腹だけが膨らんできた
・鼻や口、お尻などから原因不明の出血がある
・治りにくい皮膚のしこりや傷がある

 

<行動や様子の変化>

・元気や食欲が落ちてきた
・理由もなく吐く、下痢を繰り返す
・咳をする、呼吸が荒い、苦しそうにしている
・歩き方が不自然で足をかばっている
・口を気にして食べにくそうにする、よだれが増える、口臭が強い

 

こうした症状は必ずしもがんと断定できるわけではありませんが、「いつもと違う」状態が続くときは早めの受診をおすすめします。

 

飼い主様にできる毎日のチェックリスト

がんの早期発見には、日常のスキンシップがとても大切です。普段の触れ合いの中で健康チェックを取り入れることで、小さな変化にも気づきやすくなります。

 

<ボディチェックのポイント>

・全身をやさしく撫でて、しこりや腫れ、痛みがないかを確かめる
・歯茎や舌の色、口の中のできものを定期的に確認する
・耳の中や足の裏など、普段見落としやすい部位もチェックする

 

<日々の観察>

・食欲や飲む水の量に変化がないか
・おしっこやうんちの状態がいつも通りか
・体重が増えたり減ったりしていないか

 

<定期的な健康診断のすすめ>

また、症状が出ていなくても、年齢や体質に合わせて定期的に健診を受けることが早期発見につながります。特にシニア犬・シニア猫では、年に2回以上の健診をおすすめしています。

 

▶︎健康検査についてはこちらで解説しています

 

動物病院での診断の流れ

「病院に行ったら、どんな検査をされるのだろう?」とご不安に思われる方も多いのではないでしょうか。ここでは、一般的ながん診断の流れをわかりやすくご紹介します。

 

ステップ1:問診と身体検査
まず、飼い主様から生活や症状について詳しくお話を伺います。そのうえで、視診・触診・聴診を行い、全身の状態を丁寧に確認します。

 

ステップ2:各種スクリーニング検査
続いて、より詳しく状態を把握するためにスクリーニング検査を行います。

 

血液検査:臓器の異常や炎症の有無を数値で把握します
レントゲン検査:胸やお腹、骨の中などを画像で確認します
超音波(エコー)検査:臓器の内部やしこりの性状を詳しく観察します

 

ステップ3:確定診断のための精密検査
さらに、がんかどうかを判断するために精密検査を行います。

 

細胞診:しこりから細胞を採取し、良性か悪性かを簡易的に調べる検査で、動物への負担が比較的少ない方法です
病理組織検査:腫瘍の一部または全体を採取し、専門機関で詳細に調べる最も確実な検査です

 

このようなステップを経て確定診断がついて初めて、前回の記事でお伝えした治療の選択肢(外科手術・化学療法・支持療法など)を検討していくことができます。

 

診断を受けてから、これからを考える

 

検査結果が出たあとは、動物の状態はもちろん、ご家族のお気持ちを大切にしながら治療方針を一緒に考えていきます。前回の記事でご紹介したとおり、外科手術・化学療法・支持療法といった選択肢の中から、その子の状況に合わせてご提案していきます。

 

大切なのは、病気の診断結果そのものだけでなく、「これからどのように過ごしていきたいか」という飼い主様の想いです。私たちは一方的に治療を押しつけるのではなく、ご家族と共に悩み、考えながら、その子にとっても飼い主様にとっても最善の道を一緒に探していきます。

 

また、私たちは無理な治療を勧めることはありません。大切なのは、動物が穏やかに過ごせる時間と、ご家族の納得のいく選択だと考えています。

 

まとめ

犬や猫のがんは決して特別な病気ではなく、多くの動物が直面する可能性があります。けれども、早期に気づくことで治療の選択肢が広がり、生活の質を保つこともできます。

 

そのためには、しこりや体重の変化、食欲や行動のちょっとした異変を見逃さないことが大切です。日常のスキンシップを健康チェックの時間に変えることもできますし、症状がなくても定期的に健診を受けておくことで安心につながります。

 

そして何より、「少しでもおかしいかも」と感じたときにためらわず行動することが、愛犬や愛猫を守る第一歩です。
もしも気になる症状があったり、ちょっと心配だと思われたりする際は一度ご相談ください。当院は飼い主様と動物に寄り添いながら、一緒にこれからを考えてまいります。

 

■関連する記事はこちら
当院の腫瘍についての解説
犬と猫の肥満細胞腫について
犬と猫の体表腫瘤について

 

 

福岡市東区のみどりが丘動物病院

院長 大澤広通 

 

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