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犬や猫のがん治療について|当院が大切にする治療の選択肢
- 2025.02.18 | ブログ
動物医療において、腫瘍(がん)は年々増加傾向にあり、早期発見と適切な治療が重要です。当院では、年100件(月に4〜9件)の腫瘍摘出手術を行い、積極的にがん治療に取り組んでいます。
しかし、すべてのケースで手術が最適とは限らず、状況によっては別の選択肢を検討することもあります。
今回は、当院のがん治療方針を次の3つに分けてご紹介します。
1,外科手術が推奨される腫瘍
2.化学療法・分子標的薬・放射線治療が適している腫瘍
3.支持療法が適しているケース

■目次
1. 外科手術が推奨される腫瘍
2.化学療法・分子標的薬・放射線治療が有効な腫瘍
3.支持療法が適しているケース
4.当院の「支持治療」に対する考え方
5.当院の支持治療における課題と想い
6.私たちのがん治療に際しての約束
7.最後に
1.外科手術が推奨される腫瘍
がん治療の中で最も直接的な方法が外科手術です。特に腫瘍が局所に限局している場合は、手術による完全摘出が期待できます。

2.化学療法・分子標的薬・放射線治療が有効な腫瘍
外科手術と併用または単独で行われる治療法です。

3.支持療法が適しているケース
進行がんや全身状態により積極的な治療が難しい場合は、動物の生活の質(QOL)を重視した治療を行います。

当院の「支持治療」に対する考え方

腫瘍が原因で全身状態が悪化している場合、多くは進行性や末期の段階であることが少なくありません。
このような状況では、腫瘍を特定するために麻酔をかけて生検を行い、病理検査を実施した後に完全切除手術や化学療法を試みることが、かえって動物の体力を著しく消耗させることがあります。その結果、生活の質(QOL)が低下したり、寿命に影響を及ぼす可能性もあります。
私たちは、愛犬・愛猫は常に飼い主様のそばにいる大切な家族であり、生涯を通じて独り立ちすることのない「子供のような存在」だと考えています。
だからこそ、一緒に過ごす時間をどれだけ幸せなものにできるか、そして旅立った後も飼い主様の心を温かく支えられる存在であるかを大切にしながら、診察に取り組んでいます。
当院の支持治療における課題と想い
支持治療を選択する際には、飼い主様との信頼関係が何よりも重要です。しかし、時には「治療をしない」という選択が誤解を生み、転院され他院にて無理な手術が行われるケースがあります。
その結果、手術で良い結果が得られず「もっと早く手術をしていれば」と執刀した獣医師に言われたと、後悔や非難のお言葉をいただくことがありました。
飼い主様が手術を選んだことを後悔させてしまうので、『いやいや手術したら死期を早めると言ったでしょう』とはとても言えず、ただただ謝罪するしかないこともあります。正直に申し上げると、非常に辛い瞬間です。
私たちが最も恐れているのは、手術を選んだことを飼い主様に後悔させてしまうことです。
無理な手術によって命を縮めてしまったり、大切な時間が失われてしまったりする可能性を考えると、それを避けるための選択肢をしっかり提示することこそ、私たちの使命であると信じています。
私たちのがん治療に際しての約束
当院では、治療の選択において以下の点を大切にしています。
<飼い主様との信頼関係を基盤とする診療>
がんという病気に直面した際、「治療をするか」「介護をするか」という決断は、飼い主様にとって大きなものです。その選択に向き合う過程で、私たちは共に悩み、考えながら、最善の選択肢を一緒に探していきます。
<無理な治療は勧めない>
手術や長期の入院によって動物のQOLが損なわれる可能性がある場合、無理に治療を勧めることはありません。飼い主様と動物にとって、できる限り穏やかな時間を提供できるように努力します。
<がんと共存するためのサポート>
支持療法を通じて、痛みや苦痛を和らげながら、動物が穏やかに過ごせる時間を少しでも延ばすことを目指します。
また、飼い主様ががんと共存しながら介護をする選択をされた場合、その決断を尊重し、全面的にサポートしながら一緒に歩んでいきます。
最後に
無理な手術を行い、「手遅れでした」と謝ることで利益を得ることは、ある意味で最も簡単な選択かもしれません。しかし、それが本当に飼い主様と動物にとって最善の選択だったかを考えると、私たちの答えは「No」です。
当院では、動物のため、そして飼い主様の後悔を少しでも減らすために、支持治療や緩和ケアという道を選ぶことがあります。手術だけが最善ではなく、穏やかに過ごせる時間を大切にすることも、選択肢のひとつだと考えています。
もし飼い主様が「がんと共存する」「介護を選ぶ」と決断された際には、私たちもその決断を支える覚悟があります。
一緒に悩み、考え、最善の方法を模索しながら、最後まで飼い主様と動物の幸せを守っていきたいと思っています。
福岡市東区のみどりが丘動物病院