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愛犬の皮膚が赤い・かゆい…アレルギーだけじゃない!知っておきたい鑑別診断のポイント

「うちの仔、最近かゆがっていて……」「皮膚が赤くて、アレルギーでしょうか?」
こんなご相談が、当院にも日々寄せられています。皮膚症状を見て「アレルギーかもしれない」と感じる飼い主様は少なくありませんが、実は皮膚トラブルの原因はアレルギーだけではありません。

 

かゆみや赤み、脱毛といった症状は、感染症やホルモンの異常、生活環境の変化など、さまざまな病気や要因によって引き起こされることがあります。
当院では、かゆみだけを一時的に抑えるような処置ではなく、「根本的な原因の解明と治療」を目指した診療を行っています。

 

そこで今回は、犬の皮膚病における「鑑別診断(他の病気を一つひとつ除外していくプロセス)」の重要性について、わかりやすくご紹介します。

 

 

■目次
1.先入観が落とし穴に?「アレルギー」と決めつけないで
2.実はこんな病気だった…見逃しやすい皮膚トラブルの原因
3.病院での「鑑別診断」の流れとは?
4.飼い主様に知っておいていただきたいこと
5.まとめ

 

先入観が落とし穴に?「アレルギー」と決めつけないで

皮膚のトラブルに対して、「これはアレルギーだろう」と早い段階で判断してしまうと、ほかに潜んでいる原因を見落としてしまう恐れがあります。アレルギーだと決めてかかって、アレルゲン除去のフードに切り替えたり、市販のかゆみ止めを使用したりしても、症状が改善しないどころか悪化してしまうケースも少なくありません。

 

かゆみや脱毛、赤みなどは、内分泌疾患や感染症、さらには生活習慣や環境要因によっても起こることがあります。つまり、皮膚病は「見た目」だけでは判断できず、慎重に原因を探っていく必要があるのです。

 

実はこんな病気だった…見逃しやすい皮膚トラブルの原因

 

 

実際の診療では、「アレルギーだと思っていたら、まったく違う原因だった」というケースが少なくありません。ここでは、そのような代表的な病気をいくつかご紹介します。

 

 

甲状腺機能低下症
代謝をつかさどるホルモンの分泌が低下する病気で、高齢犬に多くみられます。代謝が落ちることで皮膚が乾燥し、左右対称の脱毛やフケ、皮膚の黒ずみ(色素沈着)などが生じます。一見すると乾燥肌や老化のように見えるため、気づかれにくいこともありますが、血液検査でホルモン値を調べることで診断が可能です。

 

副腎皮質機能低下症(アジソン病)
ホルモンのバランスが崩れることで皮膚のバリア機能が低下し、脱毛や皮膚の黒ずみが見られます。また、元気がない・食欲がない・嘔吐などの全身症状を伴うこともあり、早期に発見しなければ命にかかわることもあります。

 

湿性皮膚炎(ホットスポット)
「毎日シャンプーして清潔に保っているのに…」とおっしゃる飼い主様の中には、過度な洗浄によって皮膚のバリアが壊れ、逆に炎症を引き起こしてしまうケースもあります。特に、生乾きの被毛や湿気の多い環境では、細菌が繁殖しやすくなります。こうした条件がそろうと、急激に皮膚が赤くただれ、ジュクジュクした状態になってしまうことがあるのです。

 

そのほかにも、以下のような原因で皮膚症状が現れることがあります。

 

細菌感染(膿皮症など)
真菌感染(マラセチア、カビなど)
寄生虫(ノミ、ダニ、疥癬)
皮膚の腫瘍や免疫異常

 

このように、皮膚トラブルの背後には非常に多くの可能性があるため、「まずはアレルギーを疑う」ではなく、「幅広く考える」ことが大切です。

 

病院での「鑑別診断」の流れとは?

 

 

皮膚病の原因を突き止めるためには、「鑑別診断」が欠かせません。動物病院では、次のような手順で診察を進めていきます。

 

まずは、詳しい問診から診療を始めます。
「いつから症状が出ているか」「どの部位をかゆがるか」「最近シャンプーをしたか」「食事の内容に変化はあったか」など、生活環境や症状の経過を丁寧にお伺いすることで、診断のヒントを探ります。

 

次に、視診・触診によって皮膚の状態を確認します。病変の場所や形状、広がり方、赤みや脱毛の程度などを細かく観察します。

 

必要に応じて、以下のような検査を組み合わせて行います。
皮膚掻爬検査(寄生虫の有無を確認)
細菌培養検査(感染症の特定)
血液検査(ホルモンバランスや内臓の状態を確認)
アレルギー検査(必要な場合に実施)

 

また、当院では「かゆみの根本原因が何であるかを明確にし、根治を目指す」という方針で診療を進めており、症例にもよりますが、多くの場合は1~2か月以内に確定診断に至るように治療・検査を重ねていきます。

 

「すぐに答えが出ないこともある」とお感じになるかもしれませんが、それは決して無駄な時間ではありません。症状を一時的に抑えるだけではなく、「なぜその症状が起きているのか」を突き止めることが、再発防止や根本的な治療にとって非常に重要なのです。

 

飼い主様に知っておいていただきたいこと

皮膚病の診断と治療をスムーズに進めるためには、飼い主様のご協力もとても大切です。診療を進めるうえで、以下のようなご協力をいただけると、よりスムーズな診断につながります。

 

・症状が出たタイミングや悪化の経過を記録しておく
・食事内容やシャンプーの頻度、生活環境の変化などの情報を伝える
・自己判断で市販薬やサプリを使用する前に、まずはご相談いただく
・「アレルギー」と診断がつくまでには、段階的な検査と診断が必要なことを理解していただく

 

まとめ

犬の皮膚トラブルは、「かゆい=アレルギー」と決めつけてしまうことで、原因を見誤り、治療のタイミングを逃してしまうことがあります。

 

実際には、内分泌疾患や感染症など、まったく異なる原因が隠れていることも少なくありません。だからこそ、まずは動物病院でしっかりと診察を受け、必要に応じた検査を行うことが、症状改善の近道になります。

 

「最近、皮膚の調子が気になる」「なかなか良くならない」と感じたときは、どうぞお気軽にご相談ください。

 

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犬と猫の膿皮症について

 

福岡市東区のみどりが丘動物病院
院長 大澤広通 

 

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