受付・診療時間

休診日:水曜日/木曜日

News

犬・猫の心雑音を指摘されたら|治療はいつから?判断基準(ステージ分類)と精密検査の流れ

健康診断やワクチン接種のときに、動物病院で「心雑音がありますね」と言われると、驚いて不安になる飼い主様は少なくありません。

 

「心臓が悪いということ?」
「すぐに薬を始めなくて大丈夫?」
「様子を見ましょうと言われたけれど、本当に何もしなくていいの?」

 

このように、心雑音を指摘されたあとに戸惑ってしまうこともあると思います。

 

心雑音があるからといって、必ずしもすぐに重い心臓病や治療開始を意味するわけではありません。一方で、心臓の弁や筋肉、血液の流れに変化が起きているサインとして見つかることもあるため、必要に応じて詳しく調べることが大切です。

 

今回は、犬猫の心雑音が見つかったときに考えられる原因や、治療を始める判断基準、精密検査の流れについて紹介します。

 

 

■目次
1.心雑音とは?|心臓の音に“いつもと違う音”が混じる状態
2.心雑音があるときに考えられる可能性
3.まず何をする?|精密検査で「原因」と「今の状態」を確認する
4.治療はいつから?|心雑音だけでなく、心臓の状態で判断します
5.「治療しなくていい」と言われたけれど不安なとき
6.経過観察中に飼い主様が見ておきたいこと
7.まとめ

 

心雑音とは?|心臓の音に“いつもと違う音”が混じる状態

心雑音とは、聴診器で心臓の音を聞いたときに、通常の「ドクン、ドクン」という音に加えて、血液の流れによるいつもと違う音(「ザー」「シャー」など)が聞こえる状態です。

 

心臓は、全身に血液を送り出すポンプのような働きをしています。その中には血液の逆流を防ぐ「弁」があり、心臓の筋肉が動くことで血液が一定の方向へ流れます。

 

この流れに乱れが起こると、聴診で雑音として聞こえることがあります。

 

心雑音が聞こえる理由には、次のようなものがあります。

 

心臓の弁がうまく閉じず、血液が逆流している
心臓の筋肉に厚みや動きの異常がある
生まれつき心臓の構造に異常がある
貧血や発熱などで血液の流れが変化している
緊張や興奮によって一時的に雑音が聞こえやすくなっている

 

つまり、心雑音は「心臓に何かしらの変化があるかもしれない」というサインではありますが、心雑音そのものが病名ではありません。

 

そのため、心雑音があるからといって、必ずすぐに治療を始めるわけではありません。

 

たとえば、心雑音は聞こえるものの、心臓の大きさや動きに大きな異常がなく、症状もない場合には、定期的に経過を見る判断になることがあります。これは「見逃している」のではなく、その時点では治療よりも経過観察が適しているという医療的な判断です。

 

大切なのは、心雑音の有無だけで判断するのではなく、原因や心臓への負担の程度を確認することです。

 

心雑音があるときに考えられる可能性

心雑音が見つかったときに多い病気や、注意して確認したいポイントは、犬と猫で少し異なります。

 

犬で多い心雑音の原因

 

犬で心雑音が見つかったときに多い原因のひとつが、僧帽弁閉鎖不全症です。

 

僧帽弁閉鎖不全症とは、心臓の中にある「僧帽弁」という弁がうまく閉じにくくなり、血液の一部が逆流してしまう病気です。特に中高齢の小型犬で多く見られる病気です。初期にはほとんど症状がないため、健康診断やワクチン接種時の聴診で偶然気づかれることもあります。

 

ただし、犬の心雑音がすべて僧帽弁閉鎖不全症というわけではありません。生まれつきの心臓病や、ほかの弁の異常、不整脈などが関係していることもあります。

 

そのため、犬で心雑音が見つかった場合は「どの弁に問題がありそうか」「心臓が大きくなっていないか」「血液の逆流がどの程度あるか」を確認していきます。

 

猫で心雑音が見つかった場合

 

猫では、心筋症が背景にあることがあります。心筋症とは、心臓の筋肉に厚みや動きの異常が出る病気の総称です。代表的なものに、肥大型心筋症があります。

 

猫の心臓病は、犬の弁の病気のように「雑音の強さ」と「病気の進行度」が必ずしも一致しないことがあります。また、猫は診察時に緊張したり興奮したりすることで、一時的に心雑音が聞こえやすくなる場合もあります。

 

そのため、猫で心雑音が見つかった場合も、聴診だけで判断するのではなく、必要に応じて心エコー検査などで心臓の形や動きを確認することが大切です。

 

まず何をする?|精密検査で「原因」と「今の状態」を確認する

心雑音を指摘されたとき、まず大切なのは「なぜ雑音が聞こえるのか」と「今どの程度、病気が進んでいるのか」を確認することです。

 

精密検査の目的は、大きく分けると次の2つです。

 

・原因の特定:どのようなタイプの心臓の問題があるのかを調べる
・進行度の把握:今すぐ治療が必要か、経過観察でよいかを判断する

 

心雑音があるかどうかだけでは、治療が必要かどうかは決められません。心臓の大きさ、血液の逆流の程度、肺への影響、不整脈の有無などを総合的に確認していきます。

 

・聴診:雑音の位置、強さ、心拍のリズムを確認します
・胸部レントゲン検査:心臓の大きさや肺の状態を確認します
・心エコー検査:弁の動き、血液の逆流、心筋の厚み、心臓の動きを詳しく確認します
・心電図検査:不整脈がないかを確認します
・血圧測定:心臓や血管への負担を評価します
・血液検査:全身状態や、必要に応じて心臓に関連する数値を確認します

 

治療はいつから?|心雑音だけでなく、心臓の状態で判断します

心臓病の治療開始は「心雑音があるから」という理由だけで決まるものではありません。

 

同じ心雑音でも、心臓への負担がまだ小さい段階では、すぐに薬を始めず経過観察になることがあります。一方で、症状がなくても心臓の拡大が進んでいる場合は、治療開始を検討します。

 

このように、今どの段階にあるのかを整理するために使われるのが「ステージ分類」です。

 

犬の弁膜症で使われるステージ分類

犬の僧帽弁閉鎖不全症では、進行度をステージで分けて考えることがあります。代表的には、ACVIM分類という考え方が使われます。

 

・ステージA:好発犬種など、将来的なリスクはあるが、まだ心臓の異常は確認されていない段階
・ステージB1:心雑音はあるが、心臓の拡大は軽度、または目立たず、症状もない段階
→ 経過観察になることがあります。
・ステージB2:症状はないが、検査で心臓の拡大が進み、治療開始を検討する段階
→ 治療開始を検討します。
・ステージC:咳や呼吸困難など、心不全の症状が出て治療が必要な段階
→ 治療が必要です。
・ステージD:一般的な治療だけでは管理が難しく、より慎重な調整が必要な段階
→ より慎重な治療調整が必要です。

 

猫の心筋症で使われるステージ分類

猫の心筋症にも、進行度やリスクを考えるためのステージ分類があります。

 

・ステージA:心筋症になりやすい背景はあるが、心臓の異常は確認されていない段階
・ステージB:心臓に変化はあるが、心不全などの症状は出ていない段階
┗B1:心不全や血栓のリスクが比較的低い段階
┗B2:左心房の拡大などがあり、心不全や血栓のリスクに注意が必要な段階
・ステージC:呼吸の苦しさ、胸水、血栓による後ろ足の異常などが出ている段階
→ 症状に応じた治療が必要です。
・ステージD:治療をしても症状の管理が難しい段階
→ 治療内容の見直しや調整が必要です。

 

犬と猫では、心雑音の原因として多い病気や評価するポイントが異なります。そのため、ステージ分類だけで判断するのではなく、心エコー検査やレントゲン検査、症状の有無などをもとに、その仔に合った治療方針を考えていきます

 

「治療しなくていい」と言われたけれど不安なとき

 

心雑音を指摘されたのに「今は治療しなくていい」と言われると「何もしなくて大丈夫なのかな」と不安になることがあると思います。

 

不安が残る場合は、次の点を確認しておくと安心につながります。

 

・心エコー検査まで行っているか
・犬の場合、B1相当なのかB2相当なのか説明を受けているか
・心臓の大きさや逆流の程度はどのくらいか
・次回の再検査時期が具体的に決まっているか
・自宅で注意して見る症状を教えてもらっているか

 

「今の治療方針でよいのか確認したい」「経過観察と言われたけれど、検査結果をもう一度整理したい」という場合は、改めて説明を受けたり、セカンドオピニオンを利用したりするのも自然な選択肢です。

 

大切なのは、飼い主様が不安を抱えたままにせず「なぜ今は経過観察なのか」「どのような変化があれば治療を考えるのか」を理解しておくことです。

 

当院では、検査結果をもとに、今の心臓の状態や治療を始める目安をできるだけわかりやすくお伝えすることを大切にしています。すぐに治療が必要な状態なのか、定期的に経過を見てよい段階なのかを一緒に整理し、飼い主様が納得して方針を選べるようにサポートします。

 

「このまま様子を見ていていいのかな」「薬を始めるタイミングを知りたい」といった不安がある場合も、お気軽にご相談ください。

 

経過観察中に飼い主様が見ておきたいこと

心雑音があり、経過観察となった場合は、ご自宅での小さな変化に気づくことがとても大切です。

 

特に、呼吸の変化は心臓病の進行を見つける重要な手がかりになります。
落ち着いて寝ているとき、または静かに休んでいるときに、胸やお腹が1分間に何回上下するかを数えてみましょう

 

犬・猫の安静時の呼吸数は、1分間に15〜30回程度がひとつの目安です。
ただし、数字だけで判断するのではなく、「その仔のいつもの回数より増えていないか」を見ることも大切です。

 

毎日測る必要はありませんが、心雑音を指摘されている場合は、週に数回でも記録しておくと変化に気づきやすくなります。

 

自宅では、次のようなポイントも合わせて確認してみてください。

 

咳が増えていないか
散歩を嫌がる、途中で立ち止まることが増えていないか
以前より疲れやすくなっていないか
食欲や体重に変化がないか
ふらつきや失神のような様子がないか

 

特に、口を開けて呼吸する、舌や歯ぐきの色が紫っぽい・白っぽい、横になれず座ったまま呼吸している、ぐったりしているといった場合は、早めの受診が必要です。

 

犬でも猫でも「いつもと呼吸が違う」と感じた場合は、様子を見すぎず動物病院へご連絡ください

 

まとめ

心雑音を指摘されると不安になると思いますが、心雑音があるからといって、すぐに治療が必要とは限りません。

 

治療が必要かどうかは、原因となる病気、心臓の拡大の程度、症状の有無などを検査で確認して判断します。

 

心雑音を指摘された、治療開始のタイミングに迷っている、経過観察でよいのか不安がある。そのようなときは、どうぞ一人で抱え込まずにご相談ください。

 

愛犬・愛猫ができるだけ長く穏やかに過ごせるよう、その仔に合った検査と治療方針を一緒に考えていきます。

 

■関連する記事はこちら
犬と猫の健康検査と予防の重要性

 

福岡市東区のみどりが丘動物病院
院長 大澤広通 

 

診療案内はこちら
092-663-2225