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くしゃみ・鼻水でお困りの飼い主様へ

くしゃみ・鼻水の原因は、歯かもしれません

最近、食べるのが遅くなったり、硬いものを食べなくなったり、今まで大好きだったおもちゃを振り回さなくなったりしていませんか?口臭はありませんか?

ワンちゃんの上顎犬歯(上の二本の牙)の根っ子は鼻道ギリギリにまで達しています。その根っ子が歯周病菌に侵されると、膿をもって腫れ鼻の穴とつながります。
それを口鼻瘻管といいます。もちろんすごく痛いですが、多くの仔は我慢しながら症状を隠して食事をします。
しかし、くしゃみや鼻水は隠しきれませんので飼い主様それを見逃してはいけません。

唯一の治療法は抜歯です。抗生剤や歯石除去ではその場しのぎにしかなりません。
また、再発を繰り返しますので、治療は永遠に続きます。
悪い歯さえ抜いてしまえば、原因菌は酸素が苦手な嫌気性菌ですから、しだいに膿は引いていきます。
みなさんの様子から、痛い歯があるときより、抜いた直後の方が良く食べ、痛みもないように思います。

目の下が腫れて心配されている飼い主様へ

マズル(鼻)が長い仔で、目の下が腫れてきたら真っ先に疑われるのは歯の病気です。歯根尖膿瘍と言います。
ワンちゃんの上顎には、根が3本もある巨大な歯(第四前臼歯)があります。
その歯の横には唾液腺が開口していて、歯石が付き、化膿しやすく歯周病が好発します。膿が歯根に達した場合、目の下を腫らし、放置すると皮膚を破り膿が眼の下から出てきます。それは痛いでしょう。

自然に抜けるのを待つ飼い主様もいらっしゃいますが、この歯は待っていても抜けません。特にダックスさんは抜けません。

治療法は、やはり抜歯です。抗生剤で膿の原因の細菌をやっつける方法もありますが、必ず再発し、治療は永遠に続きます。表面だけの歯石除去も無意味です。

抜歯することにより、酸素の苦手な原因菌は死滅し、歯肉は短期間に上がってきます。
痛い歯がなくなり、以前のように食事をおいしく食べられるようになることでしょう。

歯の破折を見つけた飼い主様へ

歯が折れ、その断面かつ赤い点(歯髄)が見えている場合、そこから細菌が入り込み、 歯根が化膿しその歯だけでなくその周囲の組織もダメになってしまう場合があります。

また見た目には変化がなくても、我慢強い仔は痛みを隠して生活している場合もあります。大切な仔が辛い思いをしないよう、適切な治療を受けましょう。

Q&A

歯の上をガーゼで磨いていれば大丈夫?

“歯の汚れ”=”歯の病気”と考えている飼い主様は少なくありません。
逆に“歯がきれいだと病気でない”と誤解されやすいです。ガーゼで磨いていても、歯周ポケットの歯垢は取れませんので、歯周病はどんどん悪化してしまうのです。
口臭、歯磨きの時に出血する、歯磨きを嫌がるようになったなどの症状がある場合は、動物病院で正しく診断してもらいましょう。見た目では歯周病は正しく診断できませんので、お口の検診を兼ねた定期的な歯科予防処置も重要です。

歯周病が進んでも、元気で食欲があれば病気ではない?

歯が汚れているだけでは、病気(歯周病)ではないですが、歯周病は、飼い主様が気づかないうちにジワジワと顎の中で悪化し、1ヵ所からその周りに、次には顎全体にと徐々に広がり続けます。さらに歯周病が進むと顎全体が腐り、やがては歯周病菌の影響が全身に及ぶ怖い病気です。
元気・食欲があっても、予防や治療は早めに行うべきです。歯周病は進行してしまうと、抜歯する処置になりますが、症状が軽ければ、予防的な処置で歯を抜かずに治すことも可能です。 できるだけ若くて、麻酔のリスクが少なく、症状が軽いうちに処置をすることが、ワンちゃん・ネコさんにとっても飼い主様にとっても負担が少ない方法です。

動物病院で歯の処置をしてもらうと、麻酔をして歯を抜かれる?

動物病院での治療は、歯を抜くのが目的ではなく、歯周病という顎の壊れる病気を食い止めるのが目的です。
重度に進行した歯周病の場合は、抜歯したうえで、顎の腐った組織も除去しないといけない場合もあります。そのような進行した歯周病になる前に、動物病院でプロフェッショナルな歯と歯周ポケットのクリーニングを受け、歯周病対策を行いましょう!そうすれば、抜歯することなく、健康な歯と口を維持することができます。

無麻酔での歯石除去がよい?

無麻酔での歯垢歯石の除去は、歯や歯の囲を傷つけるため、大変危険な行為です。その上、歯表面が凹凸になり、余計に歯垢歯石が付きやすくなります。また、無麻酔ですと、歯の見える部分の歯石だけ取れるかもしれませんが、歯と歯の間や歯周ポケットの中の歯垢歯石は取れません。したがって、歯周病の予防にも治療にもなりません!
図3、図4のミニチュア・ダックスフンドは、無麻酔で歯石除去を行ったのにもかかわらず、重度歯周炎になって、上顎が腐っていた症例です。
さらには、無麻酔での歯石除去は、犬猫が意識がある状態で、頭や口を押さえつけて、痛いことを無理やり行うわけですから、ワンちゃん・ネコさんに痛い思いをさせるだけではなく、恐怖心を与えることになり、その後のホームケアもやらせてくれなくなります。絶対に無麻酔での歯垢歯石除去はやめましょう。

図3 矢印で囲まれたところが重度歯周病で、顎が腐ってしまった部分

図4 図3の抜歯した部位と、抜歯した周囲の腐った組織(左)と歯根(右)

歯を抜いたら食べられない?

歯を抜いたら食べられなくなると思っている飼い主様はたくさんいます。しかし、歯がなくても食べることができます。抜歯したその日からほとんどの仔は食べることができます。抜歯後は、2週間ほど柔らかい食事にして管理し、その後はドライフードやそれまでの食事を普通に食べることができます。つまり食事を変える必要はありません。抜歯をしてできなくなるのは、その歯を使って肉を噛み切ることだけで、ドライフードやソフトフードを食べているのであれば支障はありません。歯を全部抜歯した場合には、舌が左右どちらかにはみ出してしまうことがあります。
重度歯周病に陥った歯を抜くことは、犬猫の歯周病の痛みや辛さから解放してあげることであり、口は快適になるのです。ワンちゃん・ネコさんは歯が痛いという表現をあまりみせないため、歯周病になった仔がつらいことは、飼い主様にはわかりにくいようです。しかし歯周病が進行した歯を触ると嫌がることや、抜歯後には快適に食べられるようになることからも、進行した歯周病の場合には痛みを感じているのです。
重度の歯周炎とは、重度の感染症と同じ意味です。重度の歯周炎のところから顎骨の骨髄炎を起こす場合や、下顎骨の病的骨折をもたらすこともあります。また、当然、悪玉の歯周病菌は、顎骨から血流に乗り、全身に影響が及びます。

売っているデンタルグッズならどれでもよい?

どれでもよいわけではありません。骨、ひづめ、硬い皮、硬い素材でできたおもちゃなどは歯を折ってしまうことが多いため、与えてはいけません。また、デンタルロープは、噛んだあと、歯垢がついたままにしておくと、繊維の間で菌が増殖し、不衛生になりやすいなどの問題があります。
物を噛むことで歯の表面はいくらかきれいになるかもしれませんが、市販されているデンタルグッズのうち、歯周病の予防には役立たないものも多くみられます。
また、デンタルグッズの多くのものは「歯の汚れ」を取るもので、歯周病の予防と治療にはならない場合が多いようです。安全で効果のあるものを見極めるようにしましょう。

歯をきれいにするため、骨、ひづめなどの硬いものをあげてもよい?

骨、ひづめ、硬い皮、硬い素材でできたおもちゃなどで歯を折ってしまう場合(図5)が多いです。歯をきれいにする効果よりも、歯を折ってします危険度のほうが高いため、あげるべきではありません。

図5 上顎の前臼歯
ひづめを与えて歯を折った

歯が折れても痛がらないならそのままでも大丈夫?

歯を折って(破折)、神経や血管が露出(露髄)した場合は、犬でも痛みを感じています。それを表現していないだけです。 折れた歯を放置すると、その折れた部分から細菌が歯髄内に入り込み、歯髄が腐り、やがては、歯根の先端部分(根尖部)まで腐り、根尖の外側の顎の骨まで腐ってきます。そこまで悪化すると膿が顎の周囲まで広がり、口の中(内歯漏)や、眼の下などの皮膚に膿がでてきます。(外歯漏、図6‐1、図6‐2)。
一方、歯が折れても、早期に治療すれば、歯を抜かずに歯を保存できる治療方法もあります。
歯が折れた場合は、できるだけ早期に歯の治療をすべきです。

図6-1 辺緑性歯周炎と根尖性歯周炎の模式図

図6-2 瞼の下に、治りにくいかさぶたや排膿(-)がみられたときは、根尖病巣(根尖周囲歯周炎)の可能性がある

乳歯は放っておけば抜ける?

本来は、乳歯が抜けてから、同じ位置に永久歯が萌出するはずです。乳歯から永久歯への抜け替わりは、切歯では4カ月齢から、臼歯では5カ月齢あたりから起こります。犬歯はおよそ5カ月半ぐらいから6カ月半ぐらいまでに交替します。乳歯が抜けないと、永久歯は本来の位置に萌出することができず、永久歯は萌出を抑制されるか、間違った位置に萌出することになります。
つまり、乳歯と永久歯は同時にあるべきではないのです。永久歯の萌出に合わせて、タイミングよく乳歯が抜けると障害がないのですが、本来抜けていなければならない時期になっても乳歯が抜けてくれないと、永久歯は間違った位置に萌出し、不正咬合となる場合があります。乳歯と永久歯が同時にみられたら、様子を見ずに速やかに乳歯を抜歯しましょう。

眼の下が腫れてきたら皮膚病?

上顎の臼歯が折れたり、打撲などで歯髄が壊死したあとなど歯根の周囲に化膿(根尖病巣)ができます。 さらに進行すると眼の下や顎の下に膿がたまり、腫れることがしばしばみられます。(図7)また重度歯周炎からも顎骨が腐敗し、臼歯付近の顎が腫れることがみられます。膿が瘡蓋(かさぶた)のように出てくる場合もあり、皮膚病と勘違いされる飼い主様もいます。

右上顎臼歯の根尖病巣
M・ダックスフンド 突然顔が腫れたと来院